私たちが日常的に使う金額には、それぞれ感じるインパクトが違います。例えば、1万円と10万円では、どちらが大きいか、すぐに分かりますよね。しかし、1万円と1億円の違いとなると、その感覚がどうしても「別次元」になりがちです。
これには、行動経済学で解明された心理学的な理由があります。特に「区切り効果」「対数的な感覚」「一貫性の喪失」という理論が関わっており、金額の大小がどのように私たちの認知に影響を与えるかを見ていきましょう。
1. 金額の「区切り」による感覚の変化
行動経済学では、「区切り効果(Threshold Effect)」という現象が説明されています。これは、金額がある「区切り」を超えると、その金額に対する反応が大きく変わるというものです。
例えば、1万円と1万1000円の差は、実際には1000円ですが、私たちの感覚では「ほぼ1万円」と感じてしまいます。これは、金額の差が小さすぎて意識的に感じにくいためです。
しかし、1万円と10万円の差はどうでしょうか? これは「10倍の差」なので、明確に感じ取れるはずです。金額が増えると、心理的に明確な境界が意識され、金銭感覚が大きく変わります。
そして、1万円と1億円となると、もうその感覚はまったく別次元です。1億円という金額は、日常生活では考えられないほど大きく、感覚的に「スケールが違う」と感じてしまいます。このような場合、金銭感覚が麻痺してしまい、冷静に金額を捉えられなくなることがあります。
2. 対数的な感覚:大きな金額ほど感覚が鈍くなる
次に、人間の脳は金額が増えると、その増加を「線形的に」ではなく、「対数的に」感じることが知られています。簡単に言うと、金額が大きくなると、その増加が同じレベルでは感じられなくなるということです。
例えば、0円から1万円に増えたとき、私たちはその変化を大きく感じます。しかし、1万円から1億円に増えても、その感覚的な差はそれほど大きく感じないのです。
これは、1万円と1億円の差が「桁の違い」となるため、脳がその差を別の次元として扱うからです。私たちの脳は、金額が大きくなると、感覚的にその差を捉えにくくなるため、1億円の増加分を1万円の増加分と同じように感じてしまうことがあるのです。
3. 大きな金額による「一貫性の喪失」
普段、私たちは金銭に対して一定の感覚を保とうとしています。1万円は1万円、10万円は10万円というように、金額ごとに一貫した価値感覚を持とうとします。しかし、大きな金額が関わると、その金額があまりにも大きすぎて、一貫した感覚を保つのが難しくなります。
例えば、500万円の投資案件を検討しているとき、500万円という金額は現実的で具体的に感じられます。しかし、1億円という金額が登場すると、急に金銭感覚が麻痺してしまい、その1億円の価値を実感として理解するのが難しくなります。金額があまりにも大きすぎて、その感覚が崩れ、現実感が薄れてしまうのです。
このような「一貫性の喪失」は、大きな金額になるほど強く働きます。特に退職後の資産管理や投資において、非常に大きな金額を扱う場合、その感覚のズレに注意が必要です。
まとめ:金銭感覚のズレを理解して冷静に判断しよう
金額が大きくなると、私たちの金銭感覚はどんどん麻痺しがちです。1万円と10万円の差は明確に感じますが、1万円と1億円では、もうその感覚は「別次元」です。これは、「区切り効果」「対数的な感覚」「一貫性の喪失」といった心理学的な理論によるものです。
投資初心者の方は、これからの資産運用や投資を考えるうえで、大きな金額に対する金銭感覚のズレを理解しておくことがとても大切です。金額が大きくなるときほど、その感覚に惑わされず、冷静に判断し、計画的に行動することが、最悪な 投資失敗 末路 を避け、資産を守るために必要なことです。
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参考文献
- カーネマン, ダニエル. 『ファスト&スロー』. 早川書房, 2011年.
- 本書では、人間の意思決定のメカニズムや認知の偏りについて深く掘り下げています。特に「対数的な感覚」や「区切り効果」など、金銭感覚に関する心理学的な理論が説明されています。
- セイラー, リチャード・H, サンスタイン, キャス・R. 『ナッジ:行動を変える経済学』. 幻冬舎, 2008年.
- 行動経済学における「一貫性の喪失」や金銭感覚に関する理論が紹介されており、実際の意思決定にどう影響を与えるかを解説しています。
- グリーン, ダン. 『行動経済学の基本』. 日本経済新聞出版社, 2017年.
- 「区切り効果」についての解説がなされており、実際にどのように金額の変化が認知に影響を与えるのかを探ります。
- Psychology Today. 「How We Perceive Money」.
- 金銭感覚や金額の増加に対する人間の認知的な反応について説明しています。実際に金額が大きくなるとどのように感覚が鈍くなるかについても言及されています。
- 金銭感覚や金額の増加に対する人間の認知的な反応について説明しています。実際に金額が大きくなるとどのように感覚が鈍くなるかについても言及されています。
- ScienceDirect. 「Threshold Effect in Behavioral Economics」.
- 行動経済学における閾値ベースのインセンティブの本質的な経済学
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